アンバサダーマーケティングとは?
アンバサダーマーケティングとは、商品やサービスの熱心なファン「アンバサダー」を起用したマーケティングのことです。本当のファンによる発信は企業による発信と異なり、「広告感」が少なく、受け取り手を警戒させることがありません。ファンの「その商品・サービスが好きだ」という熱量が、消費者の心に響くことも多いです。
アンバサダーの意味、似た言葉
アンバサダー(Ambassador)のもともとの意味は「大使」です。アンバサダーマーケティングにおいては、Appleに以前存在した「エバンジェリスト」と呼ばれる熱心なファン、最近よく使われる「ロイヤルカスタマー」と同じような意味です。
インフルエンサーマーケティングとの違い
アンバサダーマーケティングと似た手法に、「インフルエンサーマーケティング」があります。インフルエンサーとは影響力のある人で、最近では特にSNSやYouTubeでファンの多い人を指します。
インフルエンサーマーケティングも、アンバサダーマーケティングと同じように、特定の個人に商品やサービスを宣伝してもらう手法です。ただ、両者には「宣伝をする人が誰か」の違いがあり、それによりインフルエンサーマーケティングは「量」を、アンバサダーマーケティングは「質」を重視した手法といえます。
インフルエンサーは、もともとファンやフォロワー数が多く、アンバサダーよりもリーチ力が高いです。ただ、彼らは宣伝する商品やサービスの、もともとのファンではありません(偶然ファンであること、あるいはファンであるインフルエンサーを探すことはあります)。そのため、たくさんの人に発信を届けることはできますが、その商品やサービスをずっと使っていたファンに比べると、熱量や発信内容などの「質」が低くなる傾向にあります。
一方のアンバサダーは、もともとその商品やサービスのファンです。ファンとしての想いや、長い利用歴による独自の意見などを持った人も多く、発信の質も高くなりやすいです。インフルエンサーに比べるとフォロワー/ファン数、つまりリーチ力は劣るものの、リーチ数に対する反応率は高くなる傾向にあります。
インフルエンサーマーケティングは認知拡大により強みがあり、アンバサダーマーケティングは見込み客獲得により強みがあります。
アンバサダーマーケティングのメリット
アンバサダーマーケティングには、認知拡大や集客以外にも、さまざまなメリットがあります。
【アンバサダーマーケティングのメリット】
・質の高い情報発信が期待できる
・ユーザー起点の自然なマーケティングができる
・自社のみで発信するよりも、広いリーチが期待できる
・集客と並行して、マーケティングに有効なフィードバックが期待できる
アンバサダーマーケティングはファン(ユーザー)による発信を軸にするため、「ステマ感」が少ないです。第三者による質も熱量も高い発信に触れることで、自然と興味をかき立てられる見込み客も多いでしょう。複数のアンバサダーを起用することで、自社のみで発信するよりも、広い範囲にリーチすることもできます。
マーケティングの過程を通して、アンバサダー(ファン)とのコミュニケーションも活性化されるでしょう。このようなユーザーは自社のアンケートや調査に対する反応もよく、商品やブランドイメージの改善に有効なフィードバックを得やすくなります。
集客・販売に関する狭義のマーケティングではなく、企画から改善までを通した広義のマーケティングに対して、より高い効果が期待できるでしょう。
アンバサダーマーケティングのデメリット
アンバサダーマーケティングには、「かかるリソースが大きい」「それなりのリスクがある」といったデメリットもあります。
【アンバサダーマーケティングのデメリット】
・アンバサダーを探すのに時間と手間がかかる
・途中でアンバサダーの熱量が低くなるリスクもある
・日常的な投稿により、イメージが悪くなることもある
自社にピッタリなアンバサダーを見つけるのには、時間も手間もかかります。自社の商品やサービスをよく利用しているユーザーを探すことはそう難しくありませんが、その中から影響力やリーチ力の高い人、ブランドイメージに合った人を探すのは骨が折れるでしょう。
イメージに合うアンバサダーが見つかっても、安心はできません。アンバサダーの熱量が途中で低くなってしまうこともありますし、商品・サービスとは関係のない日常の投稿が、ブランドイメージにそぐわないものかもしれません。自社とは全く関係ない内容の投稿でも、自社とつながりのあるアンバサダーが発信元であるため、企業イメージには影響を及ぼします。
アンバサダーを探すときは、このようなリスクを加味して、安心して起用できる人を探しましょう。
【3ステップ】アンバサダーマーケティングの進め方
アンバサダーマーケティングはそれなりのリソースがかかり、リスクもある手法です。どのような流れで進めるのか、各工程で何に気をつければいいのかは、しっかり把握しておきましょう。
【アンバサダーマーケティングの進め方】
STEP1.アンバサダーを探す、募集する
STEP2.商品やサービスを使ってもらう
STEP3.イベントを開いたりSNSに投稿したりしてもらう
STEP1.アンバサダーを探す、募集する
まずはマーケティングに起用するアンバサダーを探しましょう。自社で適切な人物を探し、声をかけることもあれば、公募により候補者を集めることもあります。
アンバサダーを探す際は、単にフォロワー数の多い人物ではなく、エンゲージメント率やブランドイメージとのマッチングも意識しましょう。どんな人物がアンバサダーに適しているのかは、記事後半で解説しています。
STEP2.商品やサービスを使ってもらう
アンバサダーを見つけたら、宣伝してもらいたい商品やサービスを使ってもらいましょう。特に既存のものではなく、新しい商品やサービスを紹介する場合、この工程は重要です。
商品やサービスに関する発信をしてもらう前に、アンバサダーとの擦り合わせをしておくといいでしょう。
ここでは「こんな風に宣伝してもらいたい」のような擦り合わせではなく、使ってみた感想を、ポジティブなものもネガティブなものも共有してもらいます。アンバサダーの感想は、商品やサービスの改善にも役立ちます。
発信前に、企画や開発に関するエピソードやそのプロダクトに対する自社の想いなど、ほかでは知りえない情報をアンバサダーに提供するのも有効です。その内容に基づいて発信をすることはなくとも、それについて知っているだけで、発信の質も熱量も変わってきます。
STEP3.イベントを開いたりSNSに投稿したりしてもらう
情報共有や擦り合わせなどの準備が整ったら、いよいよマーケティングをはじめます。アンバサダーにSNSで商品やサービスに関する発信をしてもらいます。アンバサダーが参加するイベントを開き、情報提供や見込み客獲得の場にするのもいいでしょう。
マーケティングを成功に導くアンバサダーとは?
アンバサダーには、フォロワーの多い人物を選べばいいわけではありません。フォロワー数も大切ですが、マーケティングを成功に導くには、次のような要素をチェックすべきです。
【マーケティングを成功に導くアンバサダー】
・ブランドイメージとマッチしている
・ある程度のフォロワーがいる
・エンゲージメント率が高い
・投稿やコメントの質が高い
ブランドイメージとマッチしている
アンバサダーのイメージと、自社やブランドのイメージは、マッチしていなければなりません。例えば30代女性がメインターゲットのプロダクトに、20代女性を起用すると、イメージやリーチする層にズレが出てくるでしょう。
アンバサダーの普段の発信内容もチェックし、ブランドイメージに近い人物であるか、炎上やイメージダウンのリスクが低いかも確認しておきたいです。
ある程度のフォロワーがいる
アンバサダーに起用する人物には、ある程度のフォロワー数が必要です。フォロワー数はほぼイコールリーチ力であり、最低限の数字は確保しなければなりません。
ただ、フォロワー数がとにかく多ければいいわけでもありません。フォロワー数よりもフォロー数が多ければ、それはフォローバックによる数値である可能性が高いです。その人物の発信に興味がある人、好感を持っている人は、そう多くないかもしれません。
エンゲージメント率が高い
ある程度のフォロワー数を確保できているなら、それよりもエンゲージメント率に注目しましょう。エンゲージメント率とは、投稿に対する反応率です。投稿に対する反応、つまりエンゲージメントが多いほど、その人物と発信に興味がある人、好感を持っている人は多いといえます。
具体的には、次のような数値を参考にしましょう。
【参照したいエンゲージメント】
・いいね
・リプライ
・詳細のクリック
・シェア(Facebook)
・リツイート(Twitter)
・メンション(Instagram) など
詳細のクリック数やインプレッション(閲覧)数は外からはわからないため、正確な反応率は本人に聞くしかありません。ただ、外からでも確認できるエンゲージメント数だけでも、十分参考になります。
投稿やコメントの質が高い
数値だけでなく、投稿や、それに対するコメントの質といった定性的なものも大切です。投稿内容は人の興味を引くもの、詳細が気になってしまうものか、イメージダウンのリスクがないかなどをチェックしましょう。
そのユーザーの発信に対し、どのようなコメントがついているのかもチェックすべきです。特に「それ、どこで買ったんですか?」「使用感はどうですか?」のような、商品やサービスに関する質問の多さは重視したいです。
アンバサダーマーケティングは認知拡大にも、USPの確立にも役立つ
アンバサダーマーケティングは認知拡大にも、USPの確立にも役立ちます。
USP(Unique Selling Proposition)とは、自社やその商品・サービスならではの強みのことです。ダイソンの「吸引力の変わらないただ一つの掃除機」や、ニトリの「お、ねだん以上。」などが、USPの好例です。そのブランドがほかとはどう違うのか、誰にでもすぐに伝わるようなポイントを探しましょう。
アンバサダーマーケティングを通して、このUSPが見えてくることもあります。自社の熱心なファンであるアンバサダーからのフィードバックは、自社と他社の違いや、自社だからこその「ユニークなポイント」を探す手がかりになるでしょう。
このようなフィードバックは、アンバサダーマーケティングのリーチ力や発信の質を高めるうえでも役立ちます。自社をよく理解しているアンバサダーを選び、彼らと協力してプロダクトを育てる意識を持ちましょう。
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