顧客ロイヤルティとは?
顧客ロイヤルティとは、ユーザーが企業に対して感じる「愛着」や「信頼感」のようなものです。ロイヤルティ(Loyalty)は「忠誠心」を意味する言葉で、自社に対して厚い信頼を抱いている顧客を、「ロイヤルティの高い顧客」といいます。
自社やそのブランドを継続利用してくれる「ロイヤルカスタマー」の育成が重視されるようになって久しいです。顧客ロイヤルティを高めることは、現代のマーケティングにおいて欠かせません。
顧客満足(CS)との違い
顧客ロイヤルティと似た言葉として、「顧客満足度(CS)」が思い浮かぶ人も多いでしょう。どちらも「顧客が自社の商品やサービスに満足している」ことには変わりありません。
顧客ロイヤルティとCSの違いは、「顧客の満足が続いているか」にあります。例えば商品を購入し、その機能やデザインに満足した顧客が多ければ、その商品は「CSが高い」といえます。ただ、その後のサポートが悪かったら、同じブランドを継続購入する気にはならないでしょう。
CSが「顧客のニーズに応えられたか」であるとするなら、顧客ロイヤルティは「顧客をファンにできたか」で考えるべきといえます。CSを改善するだけでは、マーケティングで継続的な成果を得ることはできないでしょう。
マーケティングで顧客ロイヤルティが重要な理由
顧客ロイヤルティが重要なのは、顧客満足度(CS)を高めるだけでは不十分だからです。顧客ロイヤルティの高い顧客は自社のファンであり、同じ商品を再購入してくれたり、新商品を出したときに、他社と比較することなく選んでくれたりするでしょう。
消費者側も、信頼や共感ができる企業から商品を買いたいと思うようになりました。
マーケティングの効率化を考えても、社会の変化からも、顧客ロイヤルティはますます重要になっていくでしょう。
顧客ロイヤルティを高める4つのメリット
顧客ロイヤルティを高めれば、マーケティングを効率化できます。それには、次のようなメリットがあるからです。
【顧客ロイヤルティを高めるメリット】
・解約率の軽減
・リピート率の向上
・客単価の向上
・拡散や口コミ
メリット1.解約率の軽減
顧客ロイヤルティを高める1つ目のメリットは、「解約率の軽減」です。ロイヤルティの高い顧客は自社を信頼してくれています。信頼している企業の商品やサービスには安心感があり、少しトラブルが起こったくらいでは解約には至らないでしょう。
企業は顧客ロイヤルティを高めるための取り組みとして、サポートにも力を入れているはずです。クレームが発生しても対応が良ければ、むしろお褒めの言葉につながることもあります。
マーケティングの世界には5:25の法則といい、「顧客の解約率を5%改善すれば、利益を少なくとも25%改善できる」という法則があります。解約率を下げることは、新規獲得よりも重要とすらいえるのです。
メリット2.リピート率の向上
顧客ロイヤルティを高める2つ目のメリットは、「リピート率の向上」です。顧客から信頼を得ていれば、同じ商品や似たような商品の再購入が期待できます。マーケティングにおける「他社との比較」がなくなるのです。
新しい商品やサービスを出したときも同じです。商品やサービスそのものの質、購入・契約後のサポート内容のわからない他社のものよりも、安心感のある企業のものを選びたいと思う人がほとんどでしょう。
メリット3.客単価の向上
顧客ロイヤルティを高める3つ目のメリットは、「客単価の向上」です。「リピート率の向上」で触れたように、消費者は安心できる企業の商品やサービスを選びたいと思うものです。新しく、信頼できそうな企業を探したり、候補を比較したりするのも面倒でしょう。
ロイヤルティを高めておけば、顧客に新しいニーズが生まれたとき、他社と比較されることなく自社を選んでもらえます。サブスクリプション(月額制)のサービスの場合、高額プランに乗り換えてもらいやすくもなるでしょう。
メリット4.拡散や口コミ
顧客ロイヤルティを高める4つ目のメリットは、「拡散や口コミ」です。SNSが普及し、多くの人が「発信」をするようになった現代において、これは大きなメリットでしょう。
人は「自分のお気に入り」を、他人にも広めたいと感じるものです。SNSで商品やサービスをおすすめしてもらったり、口コミサイトで高評価をつけてもらえたりできれば、自社でマーケティングをしなくても売れる仕組みができあがります。
【4ステップ】顧客ロイヤルティを高める方法
顧客ロイヤルティを高めることは、現代のマーケティングにおいて欠かせないことです。ロイヤルティの高い顧客は他社と比較せずに自社を選んでくれるかもしれませんし、SNSや口コミサイトでおすすめしてくれるかもしれません。
顧客ロイヤルティを高めれば、マーケティングにかけるリソースを抑えながら、売上アップが狙えるのです。そのために何をすればいいのか、4つのステップに分けて解説します。
【顧客ロイヤルティを高める方法】
STEP1.データを集めて顧客を知る
STEP2.目標を設定する
STEP3.CXを設計する
STEP4.PDCAサイクルを回す
STEP1.データを集めて顧客を知る
顧客ロイヤルティを高める最初のステップは、「データを集めて顧客を知る」ことです。顧客の声を集め、顧客が何を感じているのかを可視化しましょう。
顧客の声を集めるには、アンケートを実施したり、問い合わせをナレッジとして蓄積したりといった手段があります。これに加え、実店舗があるならスタッフから顧客の声を集めたり、通販やWeb系のサービスならレビューを参考にしたりするのもいいでしょう。
ほかにも、どんな顧客のロイヤルティが高いのか、年齢や職業などの「属性」で分析するのも大切です。
STEP2.目標を設定する
どんな顧客のロイヤルティが高いのか、顧客は何を感じているのかがわかったら、次は「目標設定」をしましょう。現状の顧客ロイヤルティを数値化し、それをいつまでに、どこまで高めるのかを設定します。
例えば売上を前年より10%アップするという目標を、組織全体で立てたとしましょう。この組織全体の最終目標を「KGI」といいます。
次に設定するのが、KGIを達成するために何をすればいいのか、中間目標である「KPI」です。KPIはマーケティングを進めるうえでの道しるべになるでしょう。顧客ロイヤルティに関するKPIには、次のような要素が考えられます。
【KPIの一例】
・客単価
・解約率
・一度の購買額
・リピートの頻度 など
STEP3.CXを設計する
マーケティングに関する各種目標(KPI)を設定したら、それを達成するための「CX」も設計しましょう。CXは「カスタマーエクスペリエンス」の略で、日本語にすると「顧客体験」となります。マーケティングを通して顧客にどんな体験を提供するのかを設定するのです。
【CXの一例】
・どんな方法で商品やサービスを知るか
・商品やサービスについて調べたり、類似品と比べたりする
・購入や契約の前に、気になる点を問い合わせてみる
・実際に購入して使ってみる
・購入や契約の後、サポートや提案を受ける
CXは「商品やサービスを使って得られる体験」ではなく、「商品やサービスを購入する前後で得られる、あらゆる体験」です。顧客にどんな体験を提供するか、言い換えれば「どうやって感動してもらうか」が、現代のマーケティングではカギを握っています。
STEP4.PDCAサイクルを回す
CX(顧客体験)を設計し、そのための施策をしたら、効果を検証・分析しましょう。「PDCAサイクル」を回して、CXやマーケティング戦略を改善し続けます。
PDCAサイクルとは、「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)」の頭文字を取った、施策や戦略を改善していくための一連の流れです。マーケティングにはもちろん、人材教育や個人の生活習慣改善など、あらゆる場面で役に立つ考え方です。
設計した通りのCXを顧客に提供できたのか、そのCXでKPIは予測通りに伸びたのか、まずは分析してみましょう。思った通りの結果が得られなかったのなら、どこかに改善の余地があるはずです。
顧客ロイヤルティを高め、省エネでマーケティングを進めよう
顧客ロイヤルティを高めるのには、それなりに時間と労力がかかります。商品やサービスはもちろん、企業としてどんなブランドを確立するのかを考え、ブランドイメージを浸透させるためにさまざまなことをしなければならないからです。
顧客アンケートや問い合わせ内容のナレッジ化だけでなく、新たにサポート窓口を設立したり、マーケティングをイチから見直したりすることもあるでしょう。顧客ロイヤルティを高めるための施策は、すぐに効果を表さないかもしれません。
ただ、顧客ロイヤルティを高められれば、マーケティング全体を省エネ化できるでしょう。新規顧客を獲得するよりも、既存顧客にリピートしてもらったり、新しく購入や契約をしてもらったりする方が簡単だからです。口コミや拡散が増えれば、顧客が自社の代わりにマーケティングをしてくれているような状況が生まれます。
まずは自社にどんな顧客がいるのか、ロイヤルティが高いのはどんな人なのかを分析してみましょう。ロイヤルティが高い顧客の感じていることや行動を知ることで、提供すべきCX(顧客体験)が見えてきます。
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