株式投資型クラウドファンディングとは?
株式投資型クラウドファンディングとは、未公開(非上場)株式を発行し、個人の出資者を募ることで、資金調達をする方法です。インターネットを通じて個人から広く資金を募る「クラウドファンディング」の一種であり、新しい資金調達の方法として注目されています。
ほかのクラウドファンディングとの違い
クラウドファンディングというと、「インターネット通販のようなもの」「自分たちの思いを伝えて支援者を募る、昔でいうパトロンのようなもの」と思う人も多いでしょう。これらは間違いではありませんが、株式投資型クラウドファンディングは、少し性質が違うかもしれません。
株式投資型クラウドファンディングについて詳しい解説を読む前に、ほかのクラウドファンディングとの違いについて確認しておきましょう。
購入型・寄付型との違い
クラウドファンディングの中でもポピュラーなのが、「購入型」「寄付型」でしょう。どちらも起案者(クラウドファンディングのプロジェクトを立ち上げる人)にはつくりたい商品・サービスや、やりたい活動があります。このプロジェクトの内容を人々に伝え、応援してくれる人を募ることで、支援金を集めます。
購入型と寄付型の違いは、「見返りの有無」です。購入型では、(たいていの場合)そのプロジェクトでつくりたい商品やサービスを、そのまま見返りとして提供します。
寄付型にはこのような「経済的価値のある見返り」はありません。ただ、「活動内容の報告」「起案者Webサイトへの支援者名の掲載」といった、経済的な価値はないものの、精神的な満足感の得られる見返りがあります。
株式投資型との違いをわかりやすくまとめると、それぞれ次のように見返りが異なります。
【クラウドファンディングごとの見返り】
株式投資型:未公開株式を上場後に売却することで得られる差益(キャピタルゲイン)
購入型:そのプロジェクトでつくられる商品やサービス
寄付型:社会的な貢献をしているという精神的満足感
融資型(ソーシャルレンディング)との違い
融資型クラウドファンディングとは、お金を貸してくれる(融資してくれる)個人を広く募り、資金調達をする方法です。個人からの融資とはいえ、当然金利も返済も発生します。企業側の「資金調達」の視点から見れば、金融機関から融資を受けるのと似ているでしょう。
融資をする個人の側から見ると、株式投資や投資信託に近い方法といえます。融資した額と利回りに応じた「金利」が定期的に入ってきますし、貸し倒れのリスクはゼロではないものの小さいです。リスクのわりに利回りのいい金融商品として人気を集めています。
金融商品であることは、株式投資型と同じです。両者の違いは「支援者がいつ、リターンを得られるのか」にあるでしょう。株式投資型は購入した未公開株式を、支援先が上場した後に売却することでリターンが得られます。一度に大きなリターンが得られるイメージです。
融資型は定期的に金利が入ってくるため、期待できるリターンは株式投資型より少ないかもしれませんが、その分リスクも小さいです。
株式投資型クラウドファンディングのメリット
株式投資型クラウドファンディングには、企業にとっては資金調達方法としての、投資家にとっては金融商品としてのメリットがあります。それぞれにとってどんなメリットがあるのか解説するので、企業は資金調達にどの方法を選ぶか、投資家はどの金融商品がいいのかを考えるうえで参考にしてみてください。
企業側のメリット
株式投資型クラウドファンディングの企業側のメリットは、やはり「経営権を握られにくい」ことでしょう。株式投資型クラウドファンディングでは、投資家1人あたりが1社に対して投資できる額が、年間50万円までと定められています。株式保有比率が大幅に変わる恐れが少なく、経営権を握られるリスクはほぼないでしょう。
例えば従来的な方法で「株式発行による資金調達」をしようとすると、特定の相手にかなりの株式を購入され、経営権を握られてしまう可能性もあります。
エンジェル投資家やベンチャーキャピタルに出資してもらう方法では、相手との相性が悪いと「経営に余計な口出しをされている」と感じるかもしれません。
いずれの場合も、自由に経営できなくなるリスクがあります。株式投資型クラウドファンディングでは、このようなリスクを限りなく軽減できるでしょう。
投資側のメリット
株式投資型クラウドファンディングの投資家側のメリットは、「未上場株式を購入できること」と「税制上の優遇措置が受けられること」でしょう。
未上場株式は、将来的に大化けする可能性を秘めています。このような株式を安い(未上場の)うちに購入しておけば、上場後の売却でかなりの差益が得られるかもしれません。
また、株式投資型クラウドファンディングへの投資では、「エンジェル税制」を適用できることがあります。
エンジェル税制はベンチャー企業の株式を購入・売却するときに受けられる優遇措置で、投資先の企業の種類に応じて、AまたはBの措置を選択できます。
【優遇措置A】
控除額:「投資額ー2,000円」を年間所得から控除
※「総所得の40%」または「1,000万円」の低い方を上限に控除
【優遇措置B】
控除額:投資額全額をほかの株式譲渡益から控除
※上限なし
なお、株式投資型クラウドファンディングでも、投資対象によっては株主優待を受けられることがあります。「その企業の将来性(上場できるか、株価はどのくらい上がるか)」を軸に、税制優遇は受けられるか、気になる優待はあるかで、俯瞰して投資対象を選びたいです。
株式投資型クラウドファンディングのデメリット
株式投資型クラウドファンディングは、資金調達をする企業にとってあまりデメリットのない方法かもしれません。どちらかというと、投資家側のデメリットの方が大きいでしょう。
企業と投資家、株式投資型クラウドファンディングをする際にどんなことに気を付ければいいのか、それぞれ解説します。
企業側のデメリット
株式投資型クラウドファンでイングにおいて、企業側のデメリットはあまりありません。株式の保有比率は変わるものの、経営権を握られるほどではないからです。
強いてデメリットを挙げるなら、「クラウドファンディングサイトの審査に通るのが難しい」「資金調達の限度(投資額の合計年間1億円まで)がある」ことがデメリットでしょう。
まず、株式投資型は購入型や寄付型のクラウドファンディングに比べて、サイトからの審査が厳しいと思った方がいいでしょう。投資家がリターンを得るには投資先企業が成長し、上場しなければなりません。リターンを出せる見込みのない企業を掲載するわけにはいかず、可能性を示せなければサイトに掲載してもらえないでしょう。
投資側のデメリット
株式投資型クラウドファンディングの最大のデメリットは、「投資先が上場しなければ、購入した株式を売却できない」ことでしょう。購入から売却までには時間がかかりますし、スタートアップやベンチャーが成功するとも限りません。
株式投資型クラウドファンディングは、「安く買った株式が大化けするかもしれない」という意味では、期待のできる金融商品です。しかし、通常の個別株よりも不安定でリスクがあり、リターンを得るまでにも時間がかかります。
1社につき50万円までしか投資できないのも、人によってはデメリットになるでしょう。ただ、株式投資型クラウドファンディングはリスクも大きいので、「分散投資せざるを得ない」のは、保険になるかもしれません。
経営権が心配なら、株式投資型クラウドファンディングで資金調達を
株式投資型クラウドファンディングは企業にとって、比較的リスクの低い資金調達方法かもしれません。従来的な方法で株式発行に発行による資金調達をしようとすれば、経営権を握られる恐れがあります。
しかし、1人の投資家につき50万円までしか出資のできない株式投資型クラウドファンディングでは、投資家に経営権を握られるリスクはほとんどありません。
口出しされて自由に経営できなくなるかもしれない「エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資」や「返済や利息の支払いがある融資(型クラウドファンディング)」と比べても、低リスクといえるでしょう。
ただ、株式投資型は「上場するまで売却できない」という特性から、ほかのクラウドファンディングよりも審査が厳しい傾向にあります。成長の可能性をきちんと示さなければ資金調達できないのは、どの方法でも同じですが、株式投資型クラウドファンディングではよりそうであることを、理解しておきましょう。
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