ふるさと納税とクラウドファンディングの違い
ふるさと納税と同じ特色を持つクラウドファンディングとして普及しはじめたのが、「ふるさと納税型クラウドファンディング」です。ガバメントクラウドファンディングとも呼ばれます。
ふるさと納税とガバメントクラウドファンディングは、「応援したい自治体に寄付(納税)する」という意味では同じですが、その意義はやや異なります。
まずは2つの違いについて、ザッと確認しておきましょう。
ふるさと納税とは
ふるさと納税とは、出身地や気になる自治体に寄付をし、その寄付額から2,000円を引いた額を税金から控除してもらう仕組みです。寄付金の額に応じて、「所得税の還付」「住民税の控除」が受けられます。
ガバメントクラウドファンディングとの違いは、「寄付先の選び方」でしょう。ふるさと納税では寄付先の特産品や主要産業にまつわる品物を、「返礼品」として受け取れます。好きな自治体に納税して、お米やお肉などの品物までもらえるような仕組みです。
一方のガバメントクラウドファンディングは、返礼品ではなく「プロジェクトの内容」ありきで寄付先を選びます。集まった寄付金でどんな取り組みをするのかが明示されていて、支援者はその内容を見て、応援したいものを選びます。プロジェクト内容重視であり、これといった返礼品のないものも多いです。
クラウドファンディングとは
クラウドファンディングとは、商品やサービスをつくったり社会的な取り組みをしたりしたい「起案者」と、それを応援したい「支援者」をつなぐ、マッチングサービスのようなものです。起案者の立ち上げた「プロジェクト」に魅力を感じた支援者は、資金を提供することで彼らを支援します。
一般的なクラウドファンディングには「リターン」と呼ばれるお礼の品があり、たいていはプロジェクトでつくろうとしている商品やサービスをお礼として返します。
一方、ガバメントクラウドファンディングには具体的なリターンのないものも多く、たいていは「活動報告」や「感謝のメール・手紙」などがリターンとなります。また、ガバメントクラウドファンディングを開けるのは、国や自治体、これらに認められた団体のみです。
通常のクラウドファンディングが商業的・ビジネス目的のものであるとするなら、ガバメントクラウドファンディングは社会貢献や、社会的な課題の解決を目的としたものです。
【起案者】ふるさと納税型クラウドファンディングのメリット・デメリット
ふるさと納税型のクラウドファンディングは、プロジェクトを起こす起案者にとっては「資金調達」の側面が強いです。ただ、資金調達にはほかの方法もあるでしょう。
ふるさと納税型クラウドファンディングで資金調達をすることにはどんなメリットがあるのか、何に気を付ければいいのか、起案者にとってのメリット・デメリットを確認しておきましょう。
メリット
ふるさと納税型のクラウドファンディングは、起案者にとって次のようなメリットがあります。
【ふるさと納税型クラウドファンディングを立ち上げるメリット】
・返礼品がなくてもOK
・目的を定めて寄付を募れる
・目標額に届かなくてもOK
クラウドファンディングはふるさと納税と異なり、返礼品が必要ありません。返礼品がない分、集まった資金はほとんど全額、活動そのものに使えます。
どんな活動のために資金を集めたいのか、目的を明示して寄付を募れるのもメリットです。寄付をする人にとって、ふるさと納税では返礼品は届くものの、寄付したお金がどんなことに使われているかがあまりわからないでしょう。そのため、社会的な取り組みに興味のある人にとっては物足りなく感じるかもしれません。
クラウドファンディングでは返礼品ではなく、活動内容に重きをおき、プロジェクトを見て寄付先を選べます。起案者からすれば、「人の想いのこもったあたたかい寄付金」を集められるのです。
また、ふるさと納税型もそのほかのものも、クラウドファンディングではどのくらいの資金を集めたいか、目標額を決めます。一般的なクラウドファンディングでは支援金が目標額に1円でも届かないと集まった資金を受け取れないこともありますが、ふるさと納税型では目標の達成・非達成にかかわらず資金を受け取れます。
ふるさと納税型のクラウドファンディングを立ち上げるメリットを総評すると、「より確実に、目的を定めて資金を集め、集まったお金は活動そのものに使える」となるでしょう。
デメリット
ふるさと納税型のクラウドファンディングを立ち上げるデメリットを挙げるとすれば、「返礼品にお金をかけすぎて、結局予算が増えないこともある」ことでしょう。
クラウドファンディングで寄付金を募る場合、ふるさと納税と異なり、返礼品を送る必要はありません。しかし、返礼品を送ってはいけないわけではありません。ほかのプロジェクトと差別化し、より多くの寄付金を集めるために、返礼品を設定するケースもあるでしょう。
しかし、返礼品にお金をかけすぎては、活動そのものに使える金額が少なくなってしまいます。最重要は活動そのものであることを意識し、費用対効果を考えてプロジェクトを実施しましょう。
【支援者】ふるさと納税型クラウドファンディングに寄付するメリット
ふるさと納税型のクラウドファンディングは、プロジェクトを起こす起案者にはもちろん、それに寄付する支援者にもメリットがあります。
【ふるさと納税型クラウドファンディングに寄付するメリット】
・寄付金控除の対象になる
・返礼品がもらえることも
・社会に貢献できる
ふるさと納税型のクラウドファンディングは、寄付金控除の対象になります。控除額は「その年の間に寄付した総額-2,000円」で、この金額が前年の所得から引かれ(控除され)ます。
税金の額は前年所得によって決まるため、控除が大きくなり所得額が小さくなれば、税額も少なくなるでしょう。
なお、控除を受けるには、寄付をした翌年の2月15日~3月16日(土日祝日の場合は翌平日)の間に確定申告をしなければなりません。このとき、寄付先から送られる寄付金受領証明書(領収書)が必要になります。
プロジェクトによっては返礼品がもらえることもありますし、何より、社会に貢献している満足感も得られます。ふるさと納税よりも、自分の寄付したお金が何に使われているかが見えるため、社会貢献の満足感は高くなるでしょう。
ふるさと納税型クラウドファンディングの事例
ふるさと納税型のクラウドファンディングがどんなものか理解するには、やはり実際の事例を見てみるのがわかりやすいでしょう。
ふるさと納税型クラウドファンディングの理解に役立つ3つの事例を紹介するので、どんな活動を応援したいか、イメージしながら読み進めてみてください。
48もの自治体が参加する、人と動物の共生を目指すプロジェクト
ふるさと納税型クラウドファンディングの中には、複数の自治体が参加する大規模プロジェクトもあります。その1つが、「ふるさと納税で罪のない動物たちの殺処分を無くす活動を応援して”人と動物の共生する日本”を実現したい!」です。
このプロジェクトには野良猫や野良犬の保護、引退した競走馬のセカンドキャリアの支援など、動物の殺処分を減らすためのプロジェクトが集まっています。
ふるさと納税で罪のない動物たちの殺処分を無くす活動を応援して「人と動物の共生する日本」を実現したい! │ ふるさとチョイス
アフターコロナを見据えた観光活性化プロジェクト
ふるさと納税型クラウドファンディングの中には、地域の観光活性化を目指すものも多くあります。そのうちの1つ、「アフターコロナを見据え、北陸唯一の現存十二天守”丸岡城”を中心に域内観光を活性化したい!」は、大成功をおさめたプロジェクトです。
福井県にある「丸岡城」は、北陸唯一の現存十二天守として名高いです。しかし、感染症による観光客や滞在時間の減少を受け、地域の観光収入は少なくなりつつあります。
この現状を踏まえ、アフターコロナを見据えた地域の観光活性化のための資金1,500万円を、クラウドファンディングで募ることになりました。最終的には3倍を超える5,398万円もの支援金が集まった、大成功プロジェクトです。
アフターコロナを見据え、北陸唯一の現存十二天守「丸岡城」を中心に域内観光を活性化したい! │ 楽天市場
地域のお米でひとり親を支援するプロジェクト
地域の農業とひとり親家庭を支援するためのプロジェクトが、茨城県つくばみらい市の「コロナ禍で疲弊したシングルマザーを支援する事業」です。
つくばみらい市ではひとり親家庭の増加が想定され、このような家庭への支援策を、早い段階で見直さなければという意見がありました。コロナ禍により職を失う人、経済的な苦境に立たされた家庭が増えたのも、無視できない要因です。
不安定な社会で貧困に苦しむひとり親家庭を支援するために、地元で取れたお米を、全国のひとり親家庭に届けるプロジェクトが立ち上がりました。このプロジェクトの特徴は、地域の家庭だけでなく、全国のひとり親家庭にお米を届けることです。
目標額の2,100万円に対して、支援金は1,135万円と半分ほどしか集まりませんでしたが、このあたたかい支援金を使いプロジェクトは実行に移されます。
コロナ禍で疲弊したシングルマザーを支援する事業 │ ふるなびクラウドファンディング
ふるさと納税型クラウドファンディングに参加できるサイト3選
ふるさと納税型クラウドファンディングに支援するには、それを専門としているサイトや力を入れているサイトを選んだ方がいいでしょう。通常のクラウドファンディングサイトには、ふるさと納税型のプロジェクトはあまり載っていません。
ふるさと納税型クラウドファンディングに興味のある人は、次のようなサイトを覗いてみましょう。
【ふるさと納税型クラウドファンディングに参加できるサイト3選】
・ふるさとチョイス
・楽天市場
・ふるなびクラウドファンディング
ふるさとチョイス
ふるさとチョイスは、ふるさと納税型クラウドファンディングを最初に立ち上げたサイトといわれています。ふるさと納税型の別名「ガバメントクラウドファンディング」も、このサイトがつくり、普及した言葉です。
複数の自治体が参加する大規模プロジェクトから、グローバル視点のプロジェクトまで、さまざまなものが掲載されています。
楽天市場
インターネット通販で知られる楽天市場も、ふるさと納税型のクラウドファンディングを掲載しています。返礼品のもらえる通常のふるさと納税と、ガバメントクラウドファンディングのプロジェクト、両方を楽天市場で見られます。
それぞれどんなプロジェクトがあるのか、眺めてみるだけでも楽しいでしょう。
ふるなびクラウドファンディング
ふるなびクラウドファンディングには、地域に根ざしたプロジェクトが多いです。地域の文化や観光促進、子育て世帯の支援など、住みよい地域をつくるためのプロジェクトがたくさん掲載されています。
Amazonギフト券に交換できる「ふるなびコイン」が、寄付金額に対して2%分もらえるのも魅力です。
ふるさと納税型クラウドファンディングでは、資金の使い道が重要
起案者にとって、ふるさと納税型クラウドファンディングでは、返礼品を用意することよりも「プロジェクト内容」をしっかり作りこむことが大切です。支援者は「社会貢献がしたい」「関心のある社会問題に支援したい」と考えているため、彼らの心に響くよう、プロジェクトのことをわかりやすく、詳しく伝えましょう。
支援者にとっては、自分にとって重要な社会問題に、直接アプローチできる方法といえます。社会貢献の気持ちが強い人は、ふるさと納税で返礼品をもらうよりも、精神的な満足感が得られるでしょう。
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