クラウドファンディングには確定申告が必要
クラウドファンディングは、商品やサービスをつくったり、社会的な取り組みをしたりするための「資金」を調達するサービスです。調達した資金はクラウドファンディングの種類により、「収入」や「寄付金」とみなされ、税金の有無も異なります。
クラウドファンディングで資金調達をする人が「個人事業主」なのか、開業届を出していない「個人」なのかでも、税金や確定申告の有無は変わってきます。
ただ、たいていの場合はクラウドファンディングをすれば収入が発生することになり、確定申告も必要になると思った方がいいでしょう。
また、クラウドファンディンに支援した人、つまり「資金提供」をした人は、確定申告により控除を受けられることもあります。特に寄付型クラウドファンディングでは「寄付金控除」を受けられるケースが多く、確定申告をしないと損をしてしまうでしょう。
確定申告の流れ
特に開業届を出していない個人や、寄付型クラウドファンディングに支援した人の中には、「確定申告をしたことがない人」が多いでしょう。そんな人に向けて、まずは確定申告のおおまかな流れを解説します。
【確定申告の流れ】
STEP1.確定申告に必要な書類を用意する
STEP2.確定申告書を記入する
STEP3.確定申告書に必要書類を添付する
STEP4.2月16日~3月15日の間に申告をする
STEP5.納税するか還付を受ける
確定申告や納税はいつすればいいのか、どんな書類をどこに出せばいいのかも確認しておきましょう。
申告期間は2月16日~3月15日
確定申告の期間は、毎年2月16日~3月15日です。3月15日が土日祝日の場合は、その次の平日が申告期限となります。この期間に所轄税務署に必要書類を提出するか、インターネットから確定申告ができる「e-Tax」で手続きをします。
【e-Taxで確定申告をするには?】
e-Taxで確定申告をするには、「電子深刻等開始届出書」を提出します。これは所轄税務署に提出することもできますし、インターネットで提出することもできます。
【確定申告後の納税期限は?】
所得税と贈与税は令和4年3月15日、消費税および地方消費税は令和4年3月31日までが納税期限です(令和3年分の確定申告の場合)。
確定申告に必要な書類
資金を調達する側、提供する側で必要なものは異なりますが、確定申告には主に次のような書類が必要です。
【確定申告に必要な書類】
・確定申告書
・本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
・マイナンバーの確認できるもの(マイナンバーカードのない場合)
・所得のわかるもの
・控除額のわかるもの
・銀行口座のわかるもの(還付を受ける場合)
購入型クラウドファンディングの確定申告
購入型クラウドファンディングは、商品やサービスをつくるための資金を集めたい「起案者」と、それを応援するために資金を提供したい「支援者」のマッチングサービスのようなものです。起案者は支援者への見返りとして、プロジェクトに掲載した商品やサービスを提供します。
「支援金の提供」という名目ではあるものの、その実態は「お金を出して商品やサービスを提供してもらう」、つまり「商品やサービスの購入」と変わりません。
そのため起案者(資金を提供してもらう側)の確定申告では、商品やサービスの販売と同じ処理をします。起案者が個人事業主なら「事業所得」で、開業届を出していない個人なら「雑所得」で、それぞれ収入として処理しましょう。
個人事業主の出資者は経費に計上できることも
購入型クラウドファンディングへの支援は、実質、商品やサービスの購入と変わりません。そのため購入型クラウドファンディングに支援したからといって、支援者が何らかの控除を受けることは、基本的にできません。代わりに、確定申告もしなくて済みます。
ただ、支援者が個人事業主であった場合は別です。個人事業主の支援者が「事業に使うためのモノ」をクラウドファンディングで購入(支援)すると、その分を「経費」に計上できます。
例えばデザイナーが「TourBox Elite:クリエイターの究極Bluetoothコントローラー」のようなプロジェクトに支援した場合、ぞの金額を経費にできます。
ほかにも「名刺入れ」や「自転車」など、仕事で使うために購入するものは経費にできることが多いです。なお、名刺入れも自転車も、勘定科目は「消耗品費」で処理します。
寄付型クラウドファンディングの確定申告
寄付型クラウドファンディングは、社会的な取り組みをしたい「起案者」と、その取り組みを応援するために資金を提供したい「支援者」をマッチングするサービスです。
購入型と異なり、寄付型は具体的な商品やサービスをつくるものではありません。そのため、これらを見返りとして提供することもありません。
ただし、「活動報告」や「(支援が実際に行われている場所の)現地視察」、起案者のWebサイトへの支援者名の記載などのリターンはあります。寄付型では「関心のある社会問題を解決するために何かしたい」と思う人たちが支援者となり、その「社会に貢献した」という満足感がリターンになるのです。
このような性質から、寄付型クラウドファンディングで集まる資金は「寄付金」として扱われます。寄付金を確定申告でどう扱うかは、「寄付を受けた人」と「寄付を受ける人」の性質によって変わります。
【起案者側】個人の支援者から受けた分
寄付型クラウドファンディングで「個人」から支援してもらったお金は「贈与」とみなされ、「贈与税」がかかります。贈与税には110万円の基礎控除があるため、年間110万円までの贈与には、税金がかかりません。
年間110万円を超える場合、110万円の基礎控除を受けた後の金額により、税率と控除額は次のようになります。
【贈与税の税率】
基礎控除後の贈与額 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超え | 55% | 400万円 |
参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税) │ 国税庁
【贈与税の計算方法】
【起案者側】法人の支援者から受けた分
寄付型クラウドファンディングで「法人」から支援してもらったお金は「一時所得」とみなされ、「所得税」がかかります。一時所得には50万円の特別控除を適用できるため、年間50万円までの支援には、税金がかかりません。
一時所得の計算方法は次の通りです。
【一時所得の計算方法】
総収入額-そのためにかかった金額-50万円の特別控除=一時所得額
【税額の計算方法】
一時所得をほかの所得と合算した「総所得額」に応じ、次の税率と控除が適用されます。
課税される所得額 | 税率 | 控除額 |
1,000~1,949,000円 | 5% | – |
1,950,000~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円~ | 45% | 4,796,000円 |
【所得税の計算方法】
所得税額は、表の税率と控除額を次の式に当てはめて計算できます。
出資者は寄付金控除を受けられることも
寄付型クラウドファンディングに支援した人は、「寄付金控除」を受けられることがあります。
寄付金控除とは、1年間で寄付した合計額を所得から控除(差し引き)できる制度で、これにより所得税や住民税を減らせます。これらの税額は所得額により決まるためです。
対象となるのは「公共機関」や「認定NPO法人」に寄付を行った場合です。寄付型クラウドファンディングでは、プロジェクトページに寄付金控除の対象になるかどうかが書かれているので、チェックしてみましょう。
寄付金控除を受けるときは、控除の対象となる寄付金がいくらあるのかを証明する書類(領収書)が必要です。対象となる金額がわかったら、次の計算式に当てはめ、控除額を計算しましょう。
1年間での対象団体への寄付金の合計額-2,000円=控除額
クラウドファンディングの種類ごとに、申告方法やかかる税金が異なる
クラウドファンディングで調達資金には、税金がかかります。ただ、かかる税金の種類や税率はクラウドファンディングの種類、起案者や支援者の性質により異なります。
クラウドファンディングの確定申告に不安のある方は、本記事をブックマーク登録してご活用ください。ケースごとの「おさらいすべきパート」は、次の表の通りです。
【購入型クラウドファンディングで資金調達をする場合】
起案者 支援者 税金の種類 おさらいすべきパート
個人事業主 - 事業所得 購入型クラウドファンディングの確定申告
個人 - 雑所得 購入型クラウドファンディングの確定申告
【寄付型クラウドファンディングで資金調達をする場合】
起案者 支援者 税金の種類 おさらいすべきパート
- 個人 贈与 贈与税 【起案者側】個人の支援者から受けた分
- 法人 一時所得 所得税 【起案者側】法人の支援者から受けた分
【寄付型クラウドファンディングに支援する場合】
起案者 支援者 寄付金控除 おさらいすべきパート
自治体や認定NPO法人 - 受けられる 出資者は寄付金控除を受けられることも
認定されていない団体 - 受けられない -
寄付金控除についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考になります。
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