寄付型クラウドファンディングとは?ほかの方法との違いや税金対策

寄付型クラウドファンディングとは?ほかの方法との違いや税金対策

寄付型クラウドファンディングとは?

 

寄付型クラウドファンディングとは、その名の通り「寄付」を募るためのクラウドファンディングです。「クラウドファンディングサイト」にどんな取り組みをしているのか、どこへの寄付を集めているのかを掲載し、支援してくれる人を募ります。

寄付型とほかのクラウドファンディングとの違いは、リターンの有無です。通常のクラウドファンディングでは、商品やサービス、金銭的な利益などのリターン(見返り)があります。しかし、寄付型にはこれらの「経済的な価値のあるリターン」がありません。

 寄付型クラウドファンディングにおける”リターン”

寄付型クラウドファンディングには、経済的な価値のあるリターンがありません。しかし、全く何の見返りもないわけではありません。寄付型には次のような、「精神的な満足感の得られるリターン」があります。

【寄付型クラウドファンディングにおけるリターン例】
・プロジェクト実施団体による活動報告
・団体Webサイトへの支援者名の掲載
・現地で活動を視察できる など

寄付型はほかのクラウドファンディングに比べると、より「社会的な意義」「慈善活動」の側面が強いです。これらの活動をしたり、協力したりすることで得られる満足感や納得感が、支援者にとってはいちばんのリターンといえるでしょう。

 寄付型クラウドファンディングの社会的意義

寄付型クラウドファンディングで資金を募るのは、主にNPO法人や一般社団法人といった「非営利団体」です。集まった寄付金はそのまま寄付されるだけでなく、次のような活動に使われることもあります。

【寄付型クラウドファンディングで行われる取り組み例】
・被災地や発展途上国への金銭的、物的支援
・無医村に診療所をつくる
・地域の観光を促進するための取り組み
・保護された動物への支援
・学校に行けない子どもたちに学びの機会をつくる など

このような活動を行えるようになることはもちろん、個人がそれぞれ関心のある社会問題を直接支援できることが、寄付型クラウドファンディングの社会的な意義といえます。

寄付型クラウドファンディングと、ほかの方法の違い

寄付型と似たクラウドファンディングに「購入型」があります。また、クラウドファンディング以外にも寄付や社会的な支援をする方法はあります。寄付型クラウドファンディングとこれらの違いはどこにあるのか、支援先を選ぶ前に確認しておきましょう。

 購入型クラウドファンディングとの違い

寄付型と購入型クラウドファンディングの最たる違いは、「リターンの性質」です。寄付型には支援先の活動報告やWebサイトへの支援者名の掲載など、精神的な満足感の得られるリターンがあります。一方、購入型クラウドファンディングでは商品やサービスなどのリターンが得られます。

寄付型のリターンには経済的な価値がなく、購入型のリターンには経済的な価値がある。これが、2つのクラウドファンディングの違いです。

 募金との違い

寄付型クラウドファンディングと募金の違いは、「お金の集め方」と「支援した後の対応」の2つでしょう。

まず、寄付型クラウドファンディングは主にインターネット上でお金を集めるのに対し、募金は主に街中やお店などでお金を集めます。お金を集めるということに変わりはありませんが、それをどこで集めるのかが違うのです。

お金の集め方の違いは、支援後の対応の違いにもつながってきます。例えば募金箱に1,000円を入れたとして、その1,000円がどこで、どんな風に使われたかはわからないでしょう。募金箱やポスターにはどんな取り組みのための募金か書かれているかもしれませんが、募金後の活動報告は基本的にありません。

支援後に活動報告を受けたり、団体とのやりとりができる寄付型クラウドファンディングでは、支援を通して団体との「つながり」ができます。このつながりと、それによって得られる「自分はこの人たちの、こんな活動を応援しているんだ」という”気持ち”も、募金との大きな違いでしょう。

 一般的な”寄付”や”支援”との違い

クラウドファンディング以外の方法でも、寄付や支援は行われています。これらとの違いは、クラウドファンディングサイトを通すか、通さないかくらいのものです。

例えばYouTubeを見ていて、「地球温暖化により住む場所のなくなった白熊への支援」や「女性差別の残る地域での啓蒙や保護活動」などの広告が流れたことはありませんか?

こういった広告は支援団体が直接つくり、また寄付先も自分たち団体のWebサイトであることが多いです。

ちなみに、「継続支援をしたい人は、団体に直接寄付した方がやりやすい」というイメージがあるかもしれませんが、クラウドファンディングにも継続支援のできるプロジェクトは増えてきています。

クラウドファンディングか直接寄付かで考えるよりも、活動内容を見て支援先を決めた方がいいでしょう。

寄付型クラウドファンディングで資金調達するメリット

寄付型クラウドファンディングは活動を行う団体にとって、有効な資金調達手段になり得ます。それは、次のようなメリットがあるからです。

【寄付型クラウドファンディングで資金調達するメリット】
・広報のスキルがなくても、サポートを受けながら支援を募れる
・広報活動にかかる人的リソースを削減し、より重要なことに集中できる
・クラウドファンディングサイトのユーザーに、広く呼びかけられる など

クラウドファンディングなら、そのサイト運営会社からのサポートを受けながら支援を募れます。広報のスキルない場合や、それを行う時間が限られているケースでは、プロのサポートは心強いでしょう。

クラウドファンディングには、そのサイト自体のファンのようなユーザーもいます。特に寄付型クラウドファンディングに特化したサイトには、慈善活動に興味のあるユーザーも多いです。このようなユーザーに広く支援を呼びかけられるのは、支援者の分母を増やすことにもつながるでしょう。

寄付型クラウドファンディングで資金調達するデメリット

クラウドファンディングで支援金を募るデメリットは、「手数料」がかかることです。慈善活動をするのに資金がいるように、クラウドファンディングサイトを運営するにもお金がかかります。「支援金が手数料で減ってしまうなんて…」と思うかもしれませんが、これは仕方のないことです。

ただ、「広報をしやすくなる」「クラウドファンディングサイトのユーザーに広く呼びかけられる」といったメリットから、手数料が引かれても活動資金や支援金の総額は増えるかもしれません。

プロジェクトを起こすなら、なるべく手数料の低いサイトを選び、まずは一度使ってみるのがいいでしょう。使う前と後、金銭的な負担が小さいのはどちらかを比べてみて、利用の継続を決めるのがおすすめです。

寄付型クラウドファンディングに支援したら、寄付金控除を受けよう

寄付型クラウドファンディングの支援者は、支援先によっては「寄付金控除」が受けられることもあります。

寄付金控除とは、寄付した分のお金を所得から引く(控除する)ことで、所得税や住民税を減らせる制度です。これらの税額は所得額によって決まるため、控除により所得が減れば税金も減ります。企業や個人事業主のする、「経費を引いて税金を抑える」に近いものと考えると、わかりやすいでしょう。

クラウドファンディングにおいては、「公共機関」や「認定NPO法人」への支援が寄付金控除の対象になります。基本的には、プロジェクトページに寄付金控除の対象になるかならないかが書かれています。

 寄付金控除の計算方法

寄付金控除の計算式は次の通りです。自分の所得や寄付の総額と照らし合わせて、実際に計算してみましょう。

【寄付金控除の計算方法】
1年間での対象団体への寄付金の合計額-2,000円=控除額

【寄付金控除の計算例】
☆条件
年間の所得額:500万円
年間の寄付額:30万円

☆控除額の計算式
300,000円(寄付額)-2,000円=298,000円(控除額)

☆所得の計算式
5,000,000円(年間の所得)-298,000円(年間の寄付金控除額)-(ほかの控除の合計額)=4,702,000円(税額計算における所得額)
※ここではわかりやすくするため、寄付金控除以外の控除をゼロとして計算しています

 寄付金控除を受けるための手続き

寄付金控除を受けるためには、「確定申告」をしなければなりません。確定申告は毎年2月16日~3月15日(土日祝日の場合は、その次の平日)にする手続きで、やり方はこちらの記事で詳しく解説しています。

確定申告をするためには、寄付額を証明するための書類(領収書)が必要です。基本的には年末ごろ、支援団体から届くので、ポストのチェックと書類の保管を忘れないようにしましょう(念のため、いつごろ書類が届くのか、事前に確認しておくことをおすすめします)。

寄付型クラウドファンディングの活用事例

寄付型クラウドファンディングどのようなものかイメージするには、やはり実際の事例をチェックするのが一番でしょう。それぞれ支援対象や活動内容の異なる3つの事例を紹介します。

 子どもたちの学ぶ機会を守る、NPO法人「Learning for All」

NPO法人の「Learning for All」は、新型コロナウイルスの感染拡大による「生活困窮世帯の子どもたち」を守るためのプロジェクトを行いました。このような世帯に対して生活物資の支援を、子どもたちにはオン・オフラインの学習支援を、そして親にも相談支援を提供するプロジェクトです。

プロジェクトの内容に共感した漫画家、『キャプテン翼』の作者である高橋陽一さんも支援者集めに協力しました。プロジェクトページに掲載するメッセージや、リターンのひとつである作者書き下ろしのポストカードは、親世代の心に刺さったことでしょう。

その結果、目標に対して124%の支援が集まり、プロジェクトは成功しました。

新型コロナウイルスにより多大な影響を受けている子どもたちの今と未来を守りたい。 │ Good Morning

 保護猫たちの健康を継続支援、NPO法人「あわねこ保育園」

保護猫を守る活動をつづけるNPO法人「あわねこ保育園」は寄付型クラウドファンディングで継続支援をしてくれる人たちを募っています。

活動は「地域住民と野良猫とのより良い関係を築くための情報提供・啓蒙活動」が主です。保護猫を守るための治療やワクチン接種、里親探しなどをしています。

支援額は1,000円~10,000円のものの中から好きなプランを選び、その額で毎月寄付を行います。支援者数の最終目標は250人。2022年4月22日時点では、累計49人の支援者が集まりました。

あわねこサポーター ~保護猫園児の医療費のご支援を~ │ READYFOR

 スーダンの無医村に診療所を、NPO法人「ロシナンテス理事長」

NPO法人の「ロシナンテス理事長」は、スーダンの無医村に診療所を作るためにプロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトが成功すれば7,000人もの命を救えるという、一大プロジェクトです。

ロシナンテス理事長にとっては初めてのクラウドファンディングで、必要な支援金は1,000万円と莫大な額でした。スーダンという、日本にとって恐らくあまり馴染みのない国にどれ程の支援が集まるのかと、不安だったことでしょう。

しかし、目標の1,000万円に対して、集まった支援金は1,431万円。ほぼ1.5倍ものあたたかい支援が集まり、医者などいなかった村に、3棟もの診療所が建つことになりました。

スーダンの無医村に診療所を建設し、7,000人の命を救いたい! │ READYFOR

寄付型クラウドファンディングで、世界を少し良い場所に

寄付型はほかのクラウドファンディングと比べて慈善事業の側面が濃く、経済的な価値のあるリターンはありません。そのため、プロジェクトの立ち上げ時に不安を感じる団体も多いでしょう。

しかし、事例を見てわかるとおり、人の世は捨てたものではありません。日本の子どもたち、保護猫、遠い国の無医村など、さまざまな人と動物に支援が届きました。

人はもともと、誰かのために何かをしたいという気持ちを持っている生き物です。そんな人たちに向けて、自分たちはどんな団体で、何のために支援を募っているのかを、わかりやすく伝えることが大切です。

主に企業や個人事業主などが行う「購入型クラウドファンディング」に興味のある方は、こちらの記事もぜひお読みください。支援者を集めるうえで重要な「リターン」の作り方について、具体的に解説しています。

クラウドファンディングが成功するリターンとは?設定方法と注意点

 

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